父の手術   ステントグラフト内挿術による遠位弓部胸部大動脈瘤の治療

この手術について


 父の胸部に大動脈瘤があると分かったとき、主治医の先生に、「この瘤が破裂した時、あなたは、この世とお別れになります。」と言われたそうです。その言葉を言った先生も言いづらかったと思いますが、それを聞いた父はさぞショックだったと思います。

普段と変わらない感じに見せていても、いつもの明るさは無いし、急に食欲も無くなり、しばらくは吐いてばかりいました。当然、家族も見ていられません。
何とかしないと、と思った時、「セカンドオピニオン」と言う言葉を思い出しました。
建築士もいろんな人が居ますが、医者だって当然そうで、良し悪しを見極めるには、まずその病気についての知識を付けようと言う事になりました。

今はインターネットがありますので、浜松と言う小さな囲いの中で限界があったとしても、世界のどこかに別の考えがあるかもしれません。
勉強していくなかで、今破裂したらどうなるんだろう?破裂すると痛いのかな?どうせなら、痛いと思う前に死んでしまった方が良いな?なんていやなことばかり頭に浮かびます。
読みなれない論文や発表会の記事を見ながら、資料作りをしました。
そして、「ステントグラフト」と言う言葉を発見し、何件かの病院を見つけました。

 後は、行動するしかありません。周りの方や、施主の方にもお話して、打ち合せの日を変更して頂いたり、時間をつくって、あちこち走り回りました。
あきらめないで頑張れば、いつかは現実のものとなる日が来て、インターネットでは、ちらちら名前が出てくるのに、連絡する場所が分からずにいた、今回手術をしてくださった先生とめぐり合うことが出来ました。
(先生お名前は迷惑になってはいけませんので、差し控えさせていただきます。)

 たまたま診察に行った病院で、この治療を薦めてもらえれば幸いですし、従来の胸部切開でいくか、ステントグラフトでいくかの選択もできますが、一般に、そのようなラッキーな人は少ないと思います。先生の所に来る方は、やはり地元以外の遠方が多いようで、地元の医者の紹介でくるようです。
では、地元の医者が知らなかったらどうでしょう?きっと、知らずにいたと思います。

今回のことで、やはりセカンドオピニオンは大切だと言うことと、病気についての基礎知識は、家族も知っておく必要があるということです。

 入院すると気が弱くなるからと、私以外の家族みんな、ウィークリーマンションを借りて看病に行ってしまいました。なんと言う過保護、勿論、父はそこまでしなくても良いと行っていましたが、病気も気の持ちようで、心強かったと思います。

 この手術の最大の利点は、なんと言っても低侵襲であることにつきます。
胸部切開の場合、3本に枝分かれしている部分を全て切除して人工血管に替えます。  当然、その3本は脳に向かう動脈なので、手術の際に、血管内の脂肪やゴミのようなものが、脳へ流れてしまうと、脳梗塞等の合併症の危険性があります。
また、人工心肺を使っての手術なので、当然身体の体力も低下する等、患者の負担が大きいと思います。
それに引き換え、ステントグラフト内挿術の場合、硬膜外麻酔(無痛分娩に使う)と言う局所麻酔を行うことで、手術中も意識がしっかりあります。
そして、次の日から、歩行練習(自分でトイレに行ったり)を始めますし、食事も普通のものになります。父は、カフェオレなども飲んでいました。3日目位になると、自分で売店にお買い物しに行く程元気になり、手術から10日目で退院することが出来ました。
手術後3ヶ月程、微熱が続きましたが、本人はすっきりした顔で、普段通りの生活を送れるようになりました。

 治療から半年が過ぎ、病院に検診に行ってきました。
結果は、異常なし。良かったです。

 最後に、治療してくださった先生をはじめ、病院でお世話になった看護士さんたちには、大変親切にして頂いたと共に、大変お世話になりました。
ありがとうございました。

 この病気は、血管の老化現象からおこるようなもので、誰でもなりうる病気です。
特に、タバコを吸われる方は、その確立は高く、永年吸っていれば殆どの方は、瘤を持っていることでしょう。父もそうでしたが、自覚症状は全く無く、普通の人なのです。症状が出たとしても、声がかすれる程度で、全く分からず、気がついたら破裂して、死んでしまった、と言うことになりかねません。ですから、この手術は、予防的治療となります。
この問題を抱えている方が、たくさんいらっしゃると思います。私たち家族の経験を是非参考にして頂ければと思います。